先輩・上官からのパワーハラスメント、性暴力、に悩んでいませんか。
当弁護団の取り組みにより、女性自衛官に対する性暴力について、国の責任を認めた裁判例があります。
ご相談例
- 自衛隊では、どういうセクハラが多いのですか。
- 25年前の1999年4月に男女雇用機会均等法が改正され、初めてセクハラ防止が事業主に義務づけられましたが、この前年に官民を問わずセクハラの実態調査が行なわれました。この結果によると、自衛隊では、猥褻な発言は日常的なこと、さわられるぐらいは当たり前、性暴力も珍しくない、という実態が判ります。
性的関係の強要=18.7%
わざとさわる=59.8%
強姦・暴行(未遂含)=7.4%
性的なからかい・冗談等=64.4%
容姿・年齢・結婚等を話題=58.9%
セクハラ発言の面では、2007年に自衛隊が作成した啓蒙チラシに次の記載があり、隊内でよく交わされている発言が垣間見えます。
(性的な関心・欲求に基づくもの)
① スリ-サイズを聞くなど身体的特徴を話題にする。
➁ 聞くに堪えない卑猥な冗談をかわす。
➂ 性的な経験や性生活について質問する。
➃ 性的な噂を立てたり、性的なからかいの対象とする。
五ノ井さんの件や隊員の声を聞くと、現在も余り変わっていないように思います。
- 上司の男性から性暴力を受けました。裁判でたたかえるでしようか。
- 沖縄では米兵による性暴力が深刻な問題ですが、自衛隊でも顕在化しています。札幌地方裁判所における空自セクハラ裁判(2010年7月29日判決)では、同僚からの性暴力被害に対する部隊の責任が認められ、損害賠償が認められています
2022年7月には、陸自隊員だった五ノ井さんが、訓練中の集団性暴力をインタ-ネットで告発してたたかい、防衛省もこれを認めて謝罪しました。その後、五ノ井さんは、国(自衛隊)と加害者を相手に損害賠償請求訴訟を提起しました。
2024年2月には、空自女性隊員が10年以上に及ぶセクハラ被害について、東京地裁に提訴しました。
現職隊員が裁判を起こしてたたかうことは大変なことですが、支援者の支えと世論の後押しで不可能ではなりなりました。支援団体や弁護団にご相談下さい。
- 上官からしつこく風俗店に誘われ、無理やり連れて行かれます。宴会で服を脱がされたり、性器を掴まれたりすることもあります。
- 自衛隊には、女性に対してだけでなく、男性間のセクハラや性暴力も広く存在します。その理由は、軍隊は「精強さ」が求められ、それが「男性性」と結びつき、若い隊員を「一人前の男にする」とか、不条理な命令に無条件に服従させるなどの悪しき男性文化があるからです。
自衛隊は上下関係が非常に厳しく、上官や先輩の命令を拒むのは難しいことです。しかし、自分のしたくないことを強要されることは明らかにハラスメントであり、人権侵害です。自衛隊における服務指導に関する資料においても禁止されています。
風俗店に行かせる、宴会で裸にさせられる、性器を掴まれる、射精させられるなどは、セクハラにとどまらず、強要罪や強制わいせつ罪の刑事犯罪にも当たります。
しかし他方で、男性間のセクハラは、男性同士の戯れや親密さにすり替えられ、ハラスメントだと理解されず、被害が隠されている実態があります。
ご本人が勇気を持って「嫌だ」「止めろ」と声をあげることが大事です。私たち弁護団は、ご本人の代弁者となって、部隊に対して、加害者への指導や処分、加害者と被害者の隔離、職場環境改善の教育の実施などを要求したりします。
- セクハラの二次被害とは、どういうものですか。どう止めたらよいですか。
- セクハラ被害者は、身心に深刻な被害を受けるだけでなく、その後も被害が続くこと少なくありません。この点で、札幌地裁判決(2010年7月29日)は、自衛隊には、①被害者が心身の被害を回復できるよう配慮すべき義務(被害配慮義務)、②加害行為によって被害者の勤務環境が不快なものとなった状態を改善する義務(環境調整義務)、③被害者が職場の厄介者として疎んじられ,様々な不利益を受けることを防止する義務(不利益防止義務)があると判示しました。
防衛省も、セクシュアル・ハラスメントの防止等に関する訓令で、セクハラ被害者が職場で不利益を受けることがないようにし、ここでいう不利益には、同僚等から受ける誹謗や中傷など職員が受けるその他の不利益が含まれるとしています。
二次被害を止める方法については、いじめ・パワハラのQ6(苦情処理申立)を参照して下さい。
裁判例
- 空自セクハラ裁判
- 札幌地方裁判所(平成22年7月29日・判例秘書搭載)
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