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1 事案の概要

 2024年6月20日、現職自衛官が、国を被告として、札幌地方裁判所に国家賠償請求訴訟を提起しました。自衛官の人権弁護団北海道で取り組んでいます。
 原告の自衛官は、自身を含む所属部隊員に対する上官のハラスメントについて陸上自衛隊パワハラ通報窓口に公益通報をしました。
 ところが、自衛隊の通報窓口によって、原告の通報した情報が所属部隊に漏洩されました。あろうことか、通報した情報がハラスメントをしていた上官の目にも触れてしまったのです。これは、公益通報対応業務従事者はその公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならないという公益通報者保護法12条やこれをもとに規定された防衛省の訓令に反します。
また、通報情報を得た所属部隊の隊長らは、原告の自衛官に対して公益通報者を特定する「自白」の強要をしました。これは、防衛省職員は公益通報者を特定しようとしてはならないとの防衛省の訓令に違反します。
 さらに原告は、複数の上官によって「ただでは済まさない」「謝れ」「処分する」「訴える」などと、約2か月にわたって責められ、告訴や遠方基地への異動まで仄めかされるなどの不利益取扱いを受けました。これは不利益取り扱いを禁じた公益通報者保護法5条や防衛省の訓令に違反します。

2 内部通報はテロ行為!?

 挙句、最も責任のある地位の上官は、「通報というテロ行為をする者を許すわけにいかない」と、自衛隊内でのハラスメント根絶のために勇気をもって通報した原告の行動を「テロ行為」扱いまでしたのです。
 このような目にあった自衛官は、通報への報復の違法性を、防衛省・自衛隊のあらゆる通報窓口・セクションに通報・相談しましたが、どこもまともな対応はせず、自浄作用は機能しませんでした。
 原告の自衛官は、ハラスメントにより隊員みんなが困る状態はいけない、子どもを自衛隊に預けている人たちにも申し訳ないとの一心で、提訴しました。

 浜田防衛大臣(当時)は2022年9月に「ハラスメントの根絶に向けた措置に関する防衛大臣指示」を出し、「ハラスメントは、基本的人権の侵害であり、また、自衛隊の精強性を揺るがす、決してあってはならないこと」であるとの認識を示しています。
 2023年11月には、木原防衛大臣が「ハラスメントが発生した場合には、発生した後の対処が大事であり、発生した場合には、その被害に遭われた隊員に、まずは寄り添うということを第一に考え、速やかな対応をして頂きたい。」と述べ、被害に遭ってしまった隊員は躊躇することなく直属の上司や通報窓口に申し出てもらえる環境が必要だとのメッセージを発しています。

 被告国が、このような大臣発言を踏まえた対応をするのか、本訴訟の注目ポイントです。関心を持っていただければ幸いです。