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部隊内の問題について自分一人に責任を負わせられそうになっている、弁護士を依頼することはできないと言われた、などお困りのことはありませんか。

ご相談例


部隊のお金を管理していますが、出納が合わず、上司から「お前が盗んだ」と言われ、警務隊の取り調べや懲戒処分があると言われました。どうしたらよいですか。
警務隊は、自衛隊内の犯罪を捜査する警察です。懲戒処分は、規律違反の疑いがあるときに司令官の命令で調査し、違反者を処分して規律回復を図るものです。別々の手続ですが、刑事事件となるような案件では、通常、警務隊の捜査が先行します。

しかし最近は、本来部隊の服務指導の中で迅速に解決されるべき案件も、警務隊に委ねることが多く、部隊の自律的な解決能力の低下、事案処理の長期化が見受けられ、私たち弁護団は批判しています。ご質問のケ-スは、出納の違算は起こり得ることであり、窃盗犯罪と決めつけるようなな対応自体がそもそも問題です。

刑事も懲戒も、いずれも供述調書を作ることになります。これは、有罪か無罪か、懲戒相当か否か、どの程度の量刑にするか(情状)の証拠になるものですから、自分の記憶と異なる内容の調書には絶対に署名・押印しないで下さい。特に、警務官や懲戒調査官は、「自分でないことを証明できるか」「余計なことは言わなくていい」「○○はこう言っているぞ」などと、自分の見込みどおりの調書を作ろうとしがちですので、迎合せずに、あなたの言い分を調書にしっかり書かせることが大事です。

警務隊の取り調べには、刑事訴訟法に基づいて弁護士を弁護人にできます。取り調べに疑問や不安を感じたら、すぐ弁護士に相談し、自分一人で対応できないと思ったら頼むとよいです。懲戒処分の弁護人選任については後述Q4で述べます。

懲戒処分の手続はどのように進むのですか。調査が終わったと言われてから半年以上経つのにまだ処分が出ません。どういうことでしょうか。  
通常の手続きは、下記の図1のとおり進みます(自衛隊法施行規則66~84条)。

あなたの案件は、審理の手続きに入る手前で止まっていると思われます。

懲戒処分の目的は、組織の秩序回復(コンプライアンス)にありますから、迅速に解決しなければ意味がありません。ところが、現在は、1年も2年もかかることが珍しくなくなっています。事案の多さ、人員不足、専門性の不足などが理由です。

2023年8月に公表された防衛省ハラスメント防止対策有識者会議の「ハラスメント防止対策の抜本的見直しに関する提言」は、懲戒処分手続の異常な遅延を厳しく批判し、一般的な事案では「原則3か月」で終えよと、異例の提言をしました。

このように、懲戒処分を遅延し身分を不安定にすることは人権侵害ですので、抗議して下さい。
服務担当者から、被疑事実通知書を渡され、「審理を願い出るか辞退するか決めろ」と言われました。どういうことでしょうか。
自衛隊の懲戒手続で、下記の図2のように例外的に「審理手続」を省略する方法が2つ認められており(自衛隊法施行規則85条)、貴方にその選択を迫っているのです。

1つは、事実が明白で争う余地がない場合で「軽処分」相当の事案は、事前に審理願いが出されなければ、処分を行うことができます。(※ 軽処分とは、5日以内の停職、減給合算額か俸給月額の3分の1を超えない減給、戒告。)

もう1つ、軽処分を超える「重処分」相当の案件も、事実が明白で争う余地がなく、隊員が審理を辞退した場合には、審理なしに処分できます。実は、「重処分」事案のほとんどにこの例外が使われ、審理抜きで処分されている実態があります。

では、皆、納得しているかといえばそうではありません。Q4で述べるように、弁護士の弁護が認められないため反論や反証の見通しが立たないことや、今後の隊員生活を考えると自衛隊に逆らわない方がよいと考えて、多くの隊員が諦めています。
審理を願い出たら「隊員の中から弁護人を選任できるけど誰かいるか」と聞かれ、「弁護士を頼むつもり」と言ったら、できないと言われた。どうしたらよいですか。
自衛隊は、自衛隊法施行規則第74条の「懲戒権者は「被審理者が申し出たときは、隊員のうちから弁護人を指名しなければならない」を理由に、弁護士を認めません。

しかし、これは誤りです。憲法は、人権の保障と法の支配を原理とし、それを実現するために法律専門家の力を得る権利を認めています。弁護士法3条は、弁護士を「当事者その他関係人の依頼」によって「一切の法律事務を行なうことを職務とする」と定めており、「当事者」に民間人と公務員、一般職と特別職といった区別はなく、懲戒処分手続が「一切の法律事務」に含まれることも明白です。常識的に考えても、懲戒権者が被懲戒者の弁護人を部下の中から指名することは、警察が被疑者の弁護人を警察官仲間から指名するに等しい不条理です。

規則74条は,経済的・地理的等の理由で弁護士を頼めない隊員や、特殊な専門的知識や経験などを持つ隊員の助力が必要な隊員のための規定であり、弁護士を排除するための規定ではありません。

私たち弁護団は、自衛隊法施行規則第74条の解釈を改めること(法律改正は不要で、すぐできる)を強く求めています。

と同時に、仮に審理自体への同席等が認められなくても、審理手続外での代理人活動までは否定できないので、次善の対応として、被疑事実への答弁や本人の言い分を書面化したり、証拠の提出を援助したり、審問手続の最中に休憩を取って弁護士のアドバイスを受ける時間を保障させるなど、できる限り弁護人に近い活動を行ないます。
懲戒処分に納得がいきません。弁護士を頼んで不服申立てできますか。
隊員が、その意に反して降任、休職若しくは免職にされた場合又は懲戒処分(免職、降任、停職、減給、戒告)を受けた場合、処分の日から3か月以内に、防衛大臣に対し審査請求ができます。

隊員からなされた審査請求は、部外有識者5名で構成される防衛人事審議会公正審査分科会に付議され、審議されます。懲戒処分者から弁明書が出され、これに対して隊員が反論書を提出し、通常は書面審理がなされ、同審議会の議決に基づいて防衛大臣が裁決し、本人に送付されます。

この手続では弁護士の代理が認められています。しかし、懲戒処分手続において認められず、この段階に至って認められても、弁護活動は実質的に手遅れになることが多いと言わざるをえません。

図1:懲戒手続の進行


図2:懲戒手続のうち審理を省略する場合の進行