自衛隊を辞めたいのに辞めさせてもらえない、部隊内の問題について自分一人に責任を負わせられそうになっている、などお困りのことはありませんか。
ご相談例
- 海外の戦場に派遣されかねない、日本が戦争するかもしれないと思うと、自衛隊の息子を辞めさせたいです。でも、自由に辞められないと聞きました。本当ですか。
- 自衛隊員の退職は、自衛隊法40条に規定されています。「(退職を)承認することが自衛隊の任務の遂行に著しい支障を及ぼすと認めるとき」で「最小限度必要とされる期間」でない限り、辞職承認処分を得て辞めることができます。従って、特殊な任務に就いていたり、海外の戦場にいるわけでもない一般隊員には「著しい支障」は考えられず、退職を認めないのは憲法22条1項の職業選択の自由の侵害になります。
ところが、隊員は、退職には上司の許可が必要であり、上司の上申が得られて初めて退職手続が進むと思い込まされています。
しかし、退職は労働者の権利ですから、まずは退職届(意思表示の年月日を明確にして)を正式に受理させることが大事です。そのうえで、「私に不承認事由がありますか。ないはずですので直ぐ承認して下さい」と追及して下さい。
上官の中には、退職理由を書かせて「こんな理由では許可が下りない」と言って手続を進めなかったり、代わりが決まるまでダメだなどと言う人がいます。しかし、退職の意思表示に理由も代わりの人も関係ありません。一般の企業や官庁の退職届が「一身上の都合により」で足りていることを想起して下さい。
- 上司の意に沿わないことを言ったことをきっかけに、まともな仕事が与えられず、誰もいない部屋に配置されました。私を退職に追い込む感じです。
- 退職の強要など不当な目的に基づく異動は、無効となります。退職を強要するために、仕事を与えないで「追い出し部屋」のようなところに配置することは、極めて違法性が強いものです。ご本人の身心の負担も大きく、大事に至らないうちに、弁護士にご相談されるとよいです。
このような不当な処遇に対して、「いじめ・パワハラ」相談Q6で述べた「苦情処理申立」を利用して改善を求めることが考えられますが、部隊内の解決方法のため、第三者性や実効性ある措置という点で極めて不十分です。従って、私ども弁護団は、ご本人の代理人として部隊と直接交渉をしつつも、事案の重大性や現状回復への実効性確保の観点から裁判手続に訴えることもあります。
- 懲戒処分の結果が出るまで退職は認めないと言われました。本当ですか。
- 部隊が根拠にするのは、自衛隊法施行規則72条2項の「規律違反の疑のある隊員をみだりに退職させてはならない」という規定です。
しかし、「みだりに」というのは、「正当な理由なく」という意味です。自衛隊法40条は、退職の申し出があれば、「(退職を)承認することが自衛隊の任務の遂行に著しい支障を及ぼす」場合でない限り認めなければならないのですから(前述のQ1)、一律に「懲戒処分中は退職できない」とするのは、原則と例外を逆転させた間違いです。正しいあり方は、退職承認手続に合せて懲戒処分手続を迅速に進めることです。退職を遅らせることができるのは、重大事件でまだ捜査中であるなどの「合理的理由」がある場合に、「最少限度必要とされる期間」だけです。
私たち弁護団は、退職手続と懲戒処分手続の両方を受任し、懲戒処分手続きを急がせ、退職承認の予定日に合わせさせるなどの解決を追求しています。
しかし、いま自衛隊は、退職申出も懲戒処分事案も山積し、退職手続が半年どころか1年以上先になることも珍しくありません。退職希望者の中には、進学や再就職を予定し、身心に故障を抱えている人もおり、重大な人権問題になっています。
このような場合、私たち弁護団は、部隊との直接交渉のほか、退職承認しないのは違法だから直ちに退職承認せよという行政訴訟の提起を考えます。
私たち弁護団の経験では、退職妨害の態様と対応には陸海空の各自衛隊で違いがあり、ご本人の事情も区々ですので、ご相談頂ければと思います。